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2007年 01月 12日
寒中お見舞い申し上げます。Corinです。今日のレビュー作品は、『40歳の童貞男』(原題『The 40 Year-old Virgin』)となっております。適切な言葉を選ぶのが面倒くさいので簡潔に内容を説明すると、40歳の童貞男が童貞を卒業するために大騒ぎする、って話ですね。まあ、なんて言うか、タイトルのまんまなんですけどね。 この映画、いかにも学問の世界で無視されちゃいそうな作品なんですが、非常によく仕上がっています。というのも、とっても分析しやすく、わかりやすいんですね。この(いい意味での)単純さこそが、Box Officeで成功を収め、主役のSteve Carellを一躍ハリウッドで有名にした所以なんじゃないかと思います。ちなみに、この『40歳の童貞男』は2005年の全米Box Office 25位で、『SAYURI』こと『Memoirs of Geisha』は27位で負け。逆に上位を見てみると、23位は『Walk the Line』、24位は『Brokeback Mountain』。オスカー受賞作品に見事に挟まれてますね。とはいえ、『40歳の童貞男』はオスカーこそ掠りもしませんでしたが、それなりに賞レースにも食い込み、特に批評家からの人気が高い作品です。 さてさて、つい無駄話をたらたらとしてしまいましたが、今回注目したいのは、主役のアンディと、彼の所有するフィギュア・コレクションとの関連性です。主役のアンディは、内向的で、保守的。それを示すように、彼は人数合わせでポーカーに誘われるまで、一度も会社の同僚と飲みに行ったこともなく、ゲームとフィギュアのコレクションに囲まれた自分のおウチにいるのが大好き。ウチに篭って、一人でゲームに集中し、フィギュアに話しかけ、毎日を同じリズムで繰り返す。一方、彼は一見かなり地味だけど、実はユーモアに富んでいて会話も面白く、女性からはオーウェン・ウィルソン(ルークの方かも… どっちか忘れました 汗)に似てると言われるくらいかっこいいし、しかも心優しい魅力の持ち主。ここで考えてみてください。アンディって、フィギュアそのものじゃないですか? アンディの集めているフィギュアは、全部「箱入り」ですよね。その理由を彼は、市場で「箱つき未開封」のほうが価値が出るから、と説明しています。そして、フィギュアのキャラクターのほとんどが脇役級。かっこいいヒーローのフィギュアは誰にでも人気があるので大量生産されるため価値が出ませんが、脇役は一部の人間にしかその魅力を認識されないが故にあまり人気がなく、手に入りにくいので、これまた価値が出るんですね。そしてそして、アンディ自身も彼のフィギュア・コレクションと同様に、家という「箱」に入って、世間に出て汚されることもなく「未使用」な状態を貫いたまま、その「魅力」をシャツinスタイルの裏に隠し持った、貴重な存在だと言えるわけです。 すったもんだして、最後にはアンディは「箱」だった家から飛び出して最愛のトリーシュと結婚、Virginを卒業し、彼のフィギュア・コレクションも世に(オークションに)出て50万ドルの値をつけました。結婚式でアンディの同僚が、「(自分の子供にも)おもちゃを買おう」と発言していますが、これ、非常に興味深いです。もちろん、表面的には「今のうちにおもちゃを買って、新品未開封のまま保存して、40年後に売って儲けよう」という意味がありますが、一方で処女崇拝的な意味合いもプンプン感じられますよね。 以上、なんだか長くなってしまいましたが、『40歳の童貞男』という作品のなかで、アンディのフィギュアは、アンディ自身のメタファーされた姿、分身なんじゃないか、ということでした。この作品を通して今回私が考えたのは、映画において、オタクが集めるフィギュアというは、Virginityつまり(性別問わずの)処女性の象徴なんじゃないかな、ということです。別にオタクはVirginだとか言ってるわけじゃありません。実際はフィギュアを箱から出して思う存分遊ぶ方もいらっしゃるでしょうし。ただ、映画のなかで、象徴として機能しているんじゃいないか、と申しているわけであります。そういった点で、あの『電車男』をもう一回見てみたくなりました。ところで、この映画は男性が主役ですが、同じような設定で女性を主役にした映画ってありますかね? Corin 公式: http://www.eiga.com/official/40DT/ (日本語) http://www.the40yearoldvirgin.com/ (英語) #
by corin_depper
| 2007-01-12 03:27
| レビューと考察
2007年 01月 01日
皆様、あけましておめでとうございます。2ヶ月ぶりの投稿となります、Corinです。さてさて、今日は久しぶりにレビューを書きますよ。映画は、先日年末のDVD半額レンタルで借りた『嫌われ松子の一生』。いやいや、キャスティングが豪華ですね~ぇ。個人的にはもうそれだけでお腹いっぱい楽しめちゃうんですが、それは置いといて…。
ちょっとまじめに考えてみました。というのも、観終わったあと、ひとつ気になることがありました。この話には、「母親」が出てこないんですよね。妹への嫉妬あり、父親と兄との確執あり、でも母親はストーリーに絡んでこない。時代背景的にも、演出的にも、松子の家族が厳格な家父長制なのは明らかなのですが、家族というテーマが大きく扱われる割には母親が不在なんです。 何はともあれ、2007年もフィルム・アカデミアをどうぞよろしくお願いいたします! Corin 公式:http://kiraware.goo.ne.jp/ #
by corin_depper
| 2007-01-01 04:20
| レビューと考察
2006年 12月 26日
また子無沙汰の記事投稿となりますが、先日『武士の一分』と『硫黄島からの手紙』を立て続けに見る機会がありまして、覚え書きとして書き残しておこうと思います。
まず、『武士の一分』でありますが、三部作の三作目という見方をしますと、ある傾向が見受けられました。時代劇という映画ジャンルで見ますと、三作目は非常に古臭い時代劇のジャンルの雛形へ寄り戻っていくフレームワークとなっておりました。そしてドラマはと言いますと、非常に『寅さん』化をしている、つまりこれも山田洋二流という意味では古臭いドラマ仕立てへと立ち戻っていく、そんな姿に見て取ることができました。どこが、どのようにというのは、挙げだすと切りがないのですが、両者に共通するところをあえて挙げますと、登場人物達のアイデンティティと言えるのではないでしょうかね。その時代そのままの価値観しか持ち合わせておらず、もしくは、映画が進むにつれそういう方向へどんどんと流れていってしまい、現代人が同等に共感できるようなところが減り続けます。それを踏まえまして、当時の価値観の中での人情・人間模様がわかり易いメロドラマ的に行われるわけです。逆に現代人我々の目が向くところはテレビのお茶の間劇場にも似た含み笑い的描写ややり取りがあるところで、これが登場人物のアイデンティティではなく、しぐさや行為に、という点でこの作品に限れば面白いところかな、という感じでした。一言で三部作の三作目としてコメントするのであれば、一作目の『たそがれ』で構築されたフレームワークの柱を4,5本抜いた骨抜き平屋建てといったところでしょうかね。その抜け落ちた部分を細かに分析してみると更に面白い発見ができそうです。 さて、次に『硫黄島』ですが、対になる作品『星条旗』をまだ見てないので比較コメントができません。が、しかし、戦争映画としては非常に優等生的にジャンルとしての雛形を使っているな、というのが第一印象でした。ただ、色やドラマのトーンを抑えているので、詩的ですね。批評家の受けは悪くはならないであろうということはわかりましたね。『武士の一分』にかけている一人称視点での物語り形式も行われていて、これもまたオーソドックスであり、かつグローバルな観客の鑑賞に堪えられる作りになっていますね。全体として、反戦一色ではない『シンレッドライン』に近い、ヒューマニティに対する問題提起的な中立的な描写に終始しているので、イーストウッドはやはりセンシティブな感性をもった映画作家であるという太鼓判のように映りました。このあまりに優等生なしあがりが賞レースにどのような結果をもたらすものか、楽しみですね。 と、いったところで、今回はこれまで。また何かあればその都度書き留めたいと思います。 Depper
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by corin_depper
| 2006-12-26 14:48
| レビューと考察
2006年 11月 29日
今回はニュースということで、アメリカでのデジタル映画映像に対しての著作権関連の話です。DVDなどのデジタル映像に対する著作権ってのはアメリカでもまだきちんと法整備されていなかったんですが、今回はこれまでのVHSなどの映像媒体と同じように、学術目的での映像コピーはデジタル映像からも例外的に許可される、という結論のようです。これが許可されない場合は映画研究者や教育者はお手上げですからね。更にDVDは映画学教育の幅をものすごく広げたと思いますし。パイレーツ対策が難しくなったのもまた時事ですがね。いずれにせよ、このような法整備がはやく国際規格で行われるとなお良いのですが。以下は記事の抜粋とリンクです。リンクで飛んだページにニュース音声版があるので英語のリスニングを苦にしない方はぜひどうぞ。より詳しい内容がわかりますよ。
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=6545255 Academics Get Exemption from DVD Copyright Law Depper
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by corin_depper
| 2006-11-29 10:19
| Newsアーカイブ
2006年 11月 25日
結構貴重、かつ面白い古典アニメをYoutubeにて発見したので、紹介しますね。Youtubeに限らず最近では映画研究者たちの間でも、同じようなシステムを使ってネット上で映画祭のような活動やアーカイブ映像のシェアを模索しているようです。きちんとクリアすることはクリアさえすれば間違いなく貢献できることが多いですよね。ということで、興味のある方は↓のリンクへどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=EH1v4vkUBt8(1943年) http://www.youtube.com/watch?v=WyGvGMa2RFg&mode=related&search=(1933年) Depper
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by corin_depper
| 2006-11-25 03:32
| 雑記
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