• 映画を少しばかり外から眺めてみるそのカタチ
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    Conversation: NHK大河ドラマ『義経』歴史からドラマから
    この度le monde lunatiqueのLunatiqueさんよりNHK大河ドラマ『義経』の記事に対して非常に有りがたい有益なコメントを頂きました。おっかなびっくり雑記としてドラマ内の議論に籠もっていた殻をざっくりと割って裸で出てきたところにピタリと合う歴史的知識という鎧を着せていただいた感じです。ということで、その鎧を着ながら、Lunatiqueさんのコメントにコメントを返すような対話形式で今回の記事エントリーとしたいと思います。
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    Lunatique
    まずは「嫡流」ということについてですが、現在の歴史学から考えると、「頼朝が源氏の嫡流であった」というのは、いささか疑問です。今回、大河ドラマ放送に合わせて、日本でもいくつかの義経本が出ましたが、それらの新しい成果は、義経の母・常盤の研究が進んだということですね。その結果、頼朝の母と義経の母に格の違いはさほどなく、むしろ常盤は非常に格が高く、義朝存命であれば義経が嫡流となる可能性もあったということです。ですから、頼朝が嫡流のプライドで生きているように描いているのは、過去の歴史学に縛られた、ドラマの設定ミスです。むしろ、実際の頼朝は、嫡流を主張できないがゆえに、一族の動きに敏感だったともいえるのではないでしょうか。そうしないと、たとえば義仲の意識なんかもうまく説明できないですね。

    Depper
    中等教育の教科書レベルの歴史的知識程度しか持ち合わせない私としては、「頼朝が源氏の嫡流ではない可能性」という議論は排除されていました。ドラマ内では妻に娶った北条政子が暗示のように「あなたは嫡流、義経は傍流」と頼朝にアイデンティティの鎧を着せていたのを思い出しました。以後頼朝が嫡流というプライドにすがるようになったのもそこに着目することでドラマ内の因果関係として説明がつくように思います。そして沸々と湧き出る兄弟愛への執着は同時に「嫡流」という血のプライドとアイデンティティを脅かすもので、他の同じ血筋を受け継ぐものたちへの距離の置き方などもある程度説得力のある心象構造となるのではないでしょうか。
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    Lunatique
    ちなみに平家の方も、清盛の長男・重盛ではなく三男・宗盛(異母弟)がいちおう「嫡流」と考えられますが、さかのぼれば清盛(忠盛の長男)自身は必ずしも嫡流とはいえず、清盛の兄弟のなかでは頼盛が嫡流的存在と考えられます。頼盛の母・池の禅尼が頼朝の助命を願い、清盛がそれをこばめなかったというのは、清盛の心情だけではなく、平家一族のなかの嫡妻・嫡流問題が絡んでいるのですね。ですから清盛は、自分の力で「嫡流」にのし上がった人物といえ、理論的には、義経にもそれは可能だったと思います。この辺の経緯は、結果的に、ドラマではうまく描けていたと思います。

    Depper
    清盛もまた頼朝とおなじく嫡流というアイデンティティとそのコンプレックスを抱いていた、という見方をすると「清盛、頼朝、義経」という関係は三角関係になって非常に面白いですね。ドラマ内で義経は最終的に清盛の夢の担ぐことで自らのアイデンティティの崩壊を防ぐわけですが、頼朝もまたしている行為は清盛と同じ根を持ち、清盛以上に執着することでアイデンティティを保持するという構図は面白いです。義経はある種清盛、頼朝の両者にとってはそれぞれかわいい息子もしくは弟であると同時に、弁慶の泣き所もしくは自身を転覆させかねない爆弾であったというわけです。平家の物語が非常に色濃く出ていた今回の『義経』への回答にもなるかもしれませんね。
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    Lunatique
    ところで、上記の常盤研究のなかで、鎌倉時代に義経が傍流とされた理由もいろいろと考察されていますが、端的にいえば、それは頼朝側の情報操作であり、そのなかで、常盤はしだいに「いやしい女性」におとしめられていった(そして義経はいやしい女性の子)、ということですね。平家のお家事情、補足しておきますと、清盛の母、いわゆる祇園女御という女性は、どういう人物かはっきりしない人です。白河院(後白河院の曾祖父)の側室とかいろいろ言われていますが定説はありません。ただ白河院に非常に近いところにいた人物だというのはたしかですね。
    これとからんで注目されるのは、清盛の実父が忠盛なのか白河院なのかはっきりしないということです。これについてもいろいろな説があります。ただ、これは清盛が生きていたころから二説ありまして、つまり、清盛は白河院の落としだねではないかと噂されていたということです。

    Depper
    この大河ドラマのドラマツルギーの軸はなんといっても、「階級、身分、アイデンティティ」なわけで、それはLunatiqueさんの歴史的解説を聞いてさらに確信に近づいたわけですが、嫡流・傍流という血筋・家柄などの社会的な枠の次に注目すべきはやはりより私的な血のつながりと関係(親・兄弟など)で、そこで本来養われ確立されるべきアイデンティティが清盛・頼朝・義経と三者とも何かが大きく欠如しているわけで、その三者のアイデンティティの揺らぎがそのままドラマとなっていますよね。その上で、(歴史的な見地からの)彼らの親子関係と(ドラマの中で描かれる)彼ら三者間にある擬似的な親子関係とを重ねるとこれまた面白いですね。ナラティブ構造の輪郭がよりはっきり見えてくる気がします。

    そして最後になんと行っても興味深いのは「女性登場人物」の存在と機能といいますか、フォーカスのされ方だと思います。話は少し戻りますが、常盤の研究が進んだのにもその辺に理由があるように思います。もちろん、女性の視聴者を獲得するためには女性の登場人物もドラマに絡んでその顔がよく見えるようにする商業的な必要性はあると思われますが、清盛・頼朝・義経と三者とも女性たちによって彼らの人生を大きく左右されることになるわけです。これは、後に別記事を立てる予定ですが、中でも一番注目したいのが上戸彩演じる「うつぼ」という女性の登場人物です。これは察するに(語り手と同じく)ドラマに挿入された架空の人物であると思われますが(モデルになるような逸話や人物はいたのかな?)、彼女のドラマ内での役割と機能はこのドラマを語る上では決して無視しては通れないでしょう。
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    と、次回の前振りをしたところで今回はこれまで。
    最後にLunatiqueさん、ありがとうございました。こういう対話ができるというのはブログ冥利というものですね~。
    Depper

    [PR]
    by corin_depper | 2006-04-01 09:59 | 雑記