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  • 映画を少しばかり外から眺めてみるそのカタチ

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    改めてある視点から『SAYURI』
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_1921638.jpgイギリスに戻ってくるつい前日に祖国日本でようやく劇場鑑賞することができました、この作品『SAYURI』。前々から様々な騒音・雑音がありながらも、引っかかっている部分がいくつかあったのでそれを確認したくて、強引に時間を作って見て来ました。予定をずらされてしまった友人たち、スイマセン(苦笑)がしかし、それなりの収穫はありましたし、疑念は晴らされました。もちろん詳しい分析はDVDを待ちたいと思いますが、それでも、日本国内外でいままで見てきたレビュー等でほとんど触れられていない着眼点を「ある視点から」ということで2,3挙げてみたいと思います。

    →この画像はイタリアで使われたもののようです。



    最初に感想から入りますと、この映画もしくは監督ロブ・マーシャルは観客に媚びてないな、と。言い換えると日本人には媚びてないな、と思いました。逆に日本人の視線はあえて無視すらしているように思えますし。つまりは、やはりこの映画は日本人以外の人たち(多くは西洋人)のために作られたような映画ですね。そのことが「ある視点」から見るとよくわかるのです。これは、日本と海外のプロモーションの仕方を見ても明白です。そしてそれは映画の中で背骨になるものでした。詳細参照ページ要するに、逆に日本人としてこの映画を真正面から見てしまったら、映画の中の世界に入らせてもらえない分ストレスが多いのは言うまでもないですね。そうすると、そういう人たちの視点はクリティカルにならざるを得ない。といったところでしょうか。つまりね、この映画内におけるカメラの視線、それは全く持って日本人が有するものではないのです。逆に日本人の方が客観視を余儀なくされるために、批判に行ってしまうのではなく、分析眼とすれば日本人にしか書けない『SAYURI』論ができるのではないかとすら思います。
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20553239.jpg

    「ある視点」としたように、この映画で明らかに意識されている観念とその表現手法は
    「視点・視線」
    にしゅうやくされるのではないか、ということです。これは「視点・視線」の物語と言ってもいいかもしれません。これを軸にしたらこの映画でそれなりのものが書けるのではないかなと思います。少し順を追って説明してみたいと思います。運よく(たぶん)キャプチャー画像を大量に置いてあるファンサイトが見つかったので、そこからいくつか拝借して様々な類の「視点・視線」を列挙していみたいと思います。

    まず、興味深いのが
    チヨサユリ」という2面性
    です。ここが機能として面白い。ヒントは青い目が教えてくれます。この映画ではやはり
    「青い目=西洋人の目・視線」
    ということになります。その目を通して彼らはこの映画を堪能する、いわゆる演劇で言う客席から(映画)舞台を眺めることができるのです。そして幼少時代のチヨを色濃く描写することによって、観客はその目から見るということをきっちり訓練されて、いざGeishaの世界を堪能するのです。それがわかるのはチヨは常に凝視・注視する存在であるということです。いきなり連れてこられたチヨはまさにこの映画に連れてこられた西洋人の観客と一緒なのです。つまり、チヨは
    「見る・覗く存在」
    なわけです。

    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_209538.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20114880.jpg






    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20125847.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20175992.jpg





    一方で、芸者となったサユリは商品として、エキゾチズムの権化として、
    「見られる・覗かれる存在」
    です。その存在になるためには一種のトランスフォームを経なければなりません。つまり、芸者になるための変身です。それは化粧であり、艶やかな着物であり、アクセサリーであります。これが整うと、チヨはサユリになり皆の視線を集める・凝視されることを命題とするGeishaという商品になるのです。余談ですが、この辺はまさにローラ・マルヴィ女史参照ページ)の著名な『ビジュアルプレジャーとナラティブシネマ(視覚快楽と物語映画)』議論における「To-be-look-at-ness(見られる存在)」なわけですね。逆に、ここに辟易としている人にとっては余りに直球描写なので目に付いて仕方ないかもしれません(苦笑) それはさておき、その視覚効果を高めるために、覗き見的な構図と描写が行われて、サユリがいかに見られる立場であるかをこれでもかと見せ付けます。

    変身・トランスフォーム
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20312478.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20313783.jpg





    見られる存在
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20343796.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20344893.jpg






    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_2035847.jpg





    抑圧された(女性としての)サユリ
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_2145843.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_20351967.jpg





    ↑の画を見ると一目瞭然ですが、変身(メーク)のシーンなどはいかに芸者が仮面をかぶるのかを見せたくて監督がわざわざ挿入したような印象です。さらに印象的なのはサユリの姿は常に何かに切り取られているような構図ではめ込まれていると言えるのではないでしょうか、ヒッチコックの『裏窓』じゃーないですが「窃視の構図」としてはありきたりな画ですね。右下の車の中の画はまるでショーケースに入れられたサユリという状態で非常に面白い画です。その観点で言うと、芸者=商品、がしかし、商品=生身の人間(女性)、その関係での軋轢と摩擦。これもまた使い古された感のある思想と映画内の表現ですが、一応抑えておこうかと思います。ある意味監督は古臭いとわかっていながらわざわざ丁寧にそこまでやさしく表現したのではないかなとすら思いますね。そういう国・時代のお話ですから。そこをあえてきちんと映像表現するあたり、個人的にロブ・マーシャル監督は優秀というか、潔いなと思います。ここを批判の的にしている人はある意味お門違いというところだと思います。そこはもう映画論的にも語りつくされたところということもありますからね。

    女性、女性、ではつまらないので男性の視点も考えてみることにします。一度変身を遂げて見られる存在のGeishaとなったサユリですが、見る存在であったチヨの消失を意味するので、見る存在がいなくなってしまいます。このときに出てくるのが
    「男性の視点・視線」
    なわけです。機能的なことだけで言えば、いわばチヨの代わりに使われているに過ぎない男性陣(苦笑)。ここから視点は性を伴うので、人によっては目に付いて嫌かもしれませんね。Geishaサユリの体は部分部分で切り取られて描写されたりしますからね。これもまた古典的ですが。

    チヨの代役・男の視線
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_21233016.jpg





    切り取られるGeishaサユリの体と着物の下ショット
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_21245287.jpg改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_21461825.jpg





    サユリが恋をすることによって、物語の後半の軸となす恋愛メロドラマの王道「三角関係」にも大きな役割を求められる二人の日本人俳優たちです。男たちもGeishaとしてのサユリに恋をすると成就できません。最終的にGeishaではないチヨに恋をした会長さん(渡辺)とチヨのハッピーエンドなのです。恋愛物語としてはGeishaは必要ないわけです。この辺はしだすと長くなるのでこの辺で。。。

    この映画を見てまず思ったのが「この映画の売り方は難しいな」ということでした。つまり、「視線・視点」という仕掛けによって、とことん西洋人向けに作られている映画で、東洋エキゾチズムも満載に描写されていますが、果たしてどこまで観客層を取り込めるのかなと考えたときに、どうしてもいわゆるハリウッド映画といえるほどの集客力があるのかは明らかに疑問です。欧米では日本映画は文化的・芸術的アートハウス系としての配給というのが筋ですから、本来そこに収まるはずの映画をハリウッド商業映画として売ると考えたときに、やはり日本での興行がメインになるのかなとも思います。実際『ラストサムライ』がそうでした。今後ここら辺も注視していきたいと思っています。

    『パールハーバー』ショット?
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_21425932.jpg





    古典的絵葉書ショット
    (日本人監督がこういう画を撮ると欧米観客への媚と言われます、笑)
    改めてある視点から『SAYURI』_e0039500_21433668.jpg






    ということで、まとめですが、なかなかほしいショットが手に入らないために、断片的ですが、「視線・視点」という着眼点からこの『SAYURI』を見てみるとなかなか興味深いものがあるというのがある程度伝わるといいのですけどね。この「目・視線・見る・見られる」という仕掛けなしではこの映画『SAYURI』は成り立ちませんね。『ラストサムライ』もそうでしたが、オルグレン(トム)が覗く役目を負わされるように、欧米人が日本を題材として映画を作る時に、やはり欧米人観客の視点となる役回りがあってそこから(エキゾチックな)異国を覗くという構造は必要不可欠なんでしょうか。

    この映画を見るうえで最初にまず確認しておかなければならないことは、この映画は
    「西洋人の、西洋人による、西洋人のための映画」
    ということです。

    というところで、今回はここまで!(疲)
    That's Wrap!!
    Depper

    参照画像:
    HelloZiyi.us
    おまけ:
    http://www.youtube.com/w/Memoirs-of-a-Geisha--Mad-TV?v=_AQvqsZFgDY&eurl=
    Excite エキサイト : 芸能ニュース 『SAYURI』ロンドンプレミア
    興行状況:
    1/11までの累計
    『SAYURI』
    USにおける興収: $41,602,941 (興収全体の76.7%)
    US以外での興収: $12,638,673 (23.3%)
    今からイギリスを始め多くの国で公開が始まります。日本・アメリカとは約1ヶ月遅れですが、これが凶とでるか吉と出るか。これから1~2週間は目が離せないですね。世界中の配給予定国で公開されて興行成績が上がってきたらまた再考してみたいと思います。
    by corin_depper | 2006-01-11 21:49 | レビューと考察