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  • 映画を少しばかり外から眺めてみるそのカタチ

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    『シンデレラマン』についてのレビューと考察
    『シンデレラマン』についてのレビューと考察_e0039500_21145217.jpg勢いで劇場へ見に行ってから中々すぐにレビューを書く時間的ゆとりがなくなってしまって、時間が空いてしまいましたが、まだまだネット上にも個人的なレビューが活発に出回ってきているでしょうから、まだ時期を逸していないといいのですが・・・。総評として、いわゆるオスカー狙いのハリウッド映画が陥りやすい「欲張りすぎた映画」になってしまったのかな、というところでしょうか。つまり、より多くの観客を引き付けようとする余りに個々では魅力的な要素なのですが、集合としてかみ合いきれずに飽和状態になってしまっている感がありますね。『パールハーバー』などよりは全く軽症ですが。裏を返すと、「優等生的な映画」でもあるように思います。特に目新しい冒険をする(=リスクを冒す)わけでもなく、かといって明らかに批判の的になるようなところもなく。予定調和と言ってしまうとそれまでですが、全体的にはうまくまとまっていると言うのが適当な印象でした。

    ひとまず、前回のエントリー記事で挙げた疑問点から解決しようかと思います。

    ① について、『シービスケット』との比較はアメリカの映画批評誌「Variety」の冒頭部分で扱われていました。もしかすると、それをそのまま・・・。ともあれ、Variety誌の記事では、なぜ比較せざるを得ないかが明記されていました。つまり、映画の物語上で描かれる主人公ブラドックの人生の浮き沈みとその軌跡が、『シービスケット』と酷似するとのこと。物語の抑揚と構成ですね。

    ② について、レネー・ゼルウィガーの役どころと彼女の持ち合わせる個性がやや不一致であることは否めませんでしたね。むしろ貧しさやそれによる惨めさを体現できずにいるように見えました。メークや衣装が全く小奇麗なままだったので。あとはあのふっくらした健康そうな顔立ちはどうしても相反してしまっているように思います。役どころは女性の観客を一心に捉えなければならない役です。逆に女性客層を多く取り込もうとしすぎたせいで、ミスキャストに始まり、プロットの焦点もぼけます。例えば、ボクシングのプロットに集中したい人などは女性代表かつ妻であるメイ役ゼルウィガーを描くシーンはジャマに思えてしまうでしょう。演技云々は個人的にはほとんど違和感を覚えませんでしたが・・・。

    ③ ネオリアリズムについて、例え指している物がイタリアのネオリアリズム映画であったとしても、とりわけ当てこする意義はないように思います。これには、正にその通りなコメントを頂いたので引用します。

    「貧しさの中の屈託のないユーモア」というのはデ・シーカの作品あたりを指しているのかな?と思ったのですが、それでもそれらの作品においては戦後の絶望的な状況の中で、そして救いのないエンディングの中でそれらのユーモアが力のある表現になってくるわけで、ボクサーが昔の栄光を取り戻す、というある種予定調和的な作品に、また「貧しさをみじめに強調するばかり」の演技を良しとせずに求めるのはちょっと違うのではないかな、と思ったのでした。またネオレアリスモは「貧しさ」や「屈託のないユーモア」といった「中身」の問題だけでなく、「スタジオではない現地での撮影」や「素人を役者として使う」いった「様式」のムーブメントでもあったわけですから、そういう意味でも引用文の中のネオリアリスモの扱いには疑問を持ったのでした。


    さて、次に少々全体の構造について考えたいと思います。
    冒頭で「欲張りすぎた映画」と銘打ちましたが、理由の一つはすでにゼルウィガーとその役柄についてのところで述べました。この映画の基本的なナラティブの構造は主人公をジム・ブラドックとした時には3本柱です。この3本が実際にはうまくバランスを図られて構築されていたように思いますが、実際にどこに集中してよいかわからず混乱を招くという原因にはなったのだと思われます。

    ① 父親としての(アイデンティティ確立の)物語
    ② 夫としての(アイデンティティ確立の)物語
    ③ ボクサーとしての(アイデンティティ確立の)物語
    『シンデレラマン』についてのレビューと考察_e0039500_21144928.jpg

    実際の伝記も読んでないですし、実在したジム・ブラドックについてはわかりかねますが、映画の中の彼はこの3者に対して何時いかなる時も背を向けず、最終的に全てのアイデンティティを確立し通した、という物語です。

    ① に関して、これは家族を飢えさせないという状況を再構築できた時点で物語としての推進力は薄れていきます。そして①を満たすことで最終的に③と向き合うことができるようになるわけです。

    『シンデレラマン』についてのレビューと考察_e0039500_21183715.jpg② に関して、映画の中ではボクサーとして闘えなくなり、生活が窮することで夫婦として今までの装飾がはがれ、向き合う形になります。折らなければならないことだらけな中で、どんなに貧しくとも夫としてのアイデンティティの最終ラインは絶対に割らせないという妻を演じるのがゼルウィガーです。そして妻が③を確立する上での最後のキーという役割を持っています。

    ③ に関して、夫としての対面するのは妻ですが、ボクサーとしてはセコンドであるジョー役のジアマッティ。ある種、男の友情物語です。描かれ方としてはやや奇薄ながら、ジョーはスクリーン上ではリングに一番ちかい観客をして我々にスクリーンの向こうの空気と臨場感を伝える役目を負っています。ボクサーとしてということは多分に男としてのアイデンティティとも言えますが、ジョー無しではセカンドチャンスをもらえなかったわけです。最終的な確立はチャンピオンと真正面から対峙し、倒すことで自分がまた栄光のチャンピオンベルトを奪回してなされるわけです。そしてこの予定調和的なプロットは①と②を抱き込むことによって骨太なプロットにするというコンセプトだったはずです。

    よく言えば、この3本柱は比較的バランスよく描かれ、互いがプロットとしてよく絡み合っているという感じもします。本来は③がメインプロットなのでしょうが、①や②のサブプロットに厚みを持たせることで、より多くの老若男女を客層として取り込もうとしたばかりに、結果として3本柱になってしまっているとも受け取れます。3本丸々3本として楽しめるのならいいですが、3本になってしまっていることで、逆に観客がどこに焦点を当てて観ればいいのか迷わせてしまう結果となってしまったのかなとも思います。

    補足として、主人公ジムが最後に挑むチャンピオン役マックスをただの勧善懲悪的ヒール役に貶めてしまうのではなく、彼にキャラクター(顔)を持たせることで、ジムとマックスとのある種友情にも似たライバル関係に発展させようという試みが前面に出ていましたが、いかんせん、既に2時間を越える長さになっており、描ききれていなかったという印象も与えてしまう完成度でした。ボクサー2人を並列に描くことで、ボクサーの商品化され消費されるいずれ戦えなくなった時がお払い箱という宿命的な悲哀とそれに対するお互いのシンパシーが入り混じるところまではよく出ていたと思います。ただ、このサブプロット的な描写も線になるほど濃くなかったので、もしかすると、観客の視点を惑わすだけという形で作用してしまった可能性は否めないと思います。

    最後に歴史的バックグラウンドと主人公の人生とのシンクロですが、これを完全に消費できるのはその時代を生きたアメリカ人だけかもしれません。ジムは、アイリッシュ系移民ですが、最終的に貧しい生活を強いられている移民者たち全体の希望であり代表として描かれます。日本語ではよく「貧困に打ち勝って」だとかいう表現が前面に出されていますが、プロット上そこが最重要要素ではないと思います。逆から読めば、経済的弱者を背負うことでより多くの観客層を獲得しに行く姿勢が表れていますし、国自体の経済的恐慌とシンクロさせることで、「成せば成る。チャンスをつかめるのがアメリカだ。」というアメリカンドリームの発露的なモチーフを映画に付与するものだと思います。

    『シンデレラマン』についてのレビューと考察_e0039500_21192451.jpg蛇足:ジェンダー的に見ると、どん底に耐え続け、そこから這い上がったその姿に「シンデレラ」という冠が付けられるわけですが、いわゆる男として、父として、夫として成功した「理想の新男」として見た場合に、「シンデレラ」という女性的な冠を拝して初めて成せるのかなと。冒頭に登場するラッセル・クロウの姿はなで肩で顔も丸く、いかついマックスとは非常に対照的です。まぁ、シンデレラストーリー=ハッピーエンドなので、タイトルから予定調和が始まると言ってしまうとそれまでなのですが、その予定調和をうまく壊して再構築仕切れなかったところが、興行にも響いているのかなとも思います。得てして、オスカー狙う映画ってのは必ずしも興行が爆発的に伸びる必要もないですからね。


    Depper


    参照:
    Varietyレビュー
    Eiga.comレビュー

    by Corin_Depper | 2005-09-21 21:20 | レビューと考察